ストレス障害とは?ストレスをため続けるとどうなってしまうのか⁈

以前はストレスとは何かそのメカニズムや対処法について解説しました。今回は、ストレス反応を受け続けると私たちはどのような障害に陥いってしまうのかをみていきます。

この記事を読むと、ストレス障害について大まかに理解できるでしょう。また、ストレス耐性を高めるために日常で気をつけることがわかります。

ストレス障害って何⁈

まずはストレス障害がどのようなものなのかをみていきましょう。

ストレス障害とは?

ストレス障害とは、ストレス反応が非可逆的になった状態です。

例えば、恐怖体験をしたとしましょう。具体例としては、「ホラー映画をみたとき」「クマに遭遇したとき」「強盗にあったとき」などを想像してください。ここでの反応は、「動悸がする」「手足が震える」「音に敏感になる」などが出現するでしょう。通常これらの反応は一過性であり、後々障害になることはありません。

しかし、ストレス障害ではこれらの反応が一過性ではなく何らかの形で続いてしまいます。そして元の状態に簡単に戻ることができなくなってしまうのです。これがストレス障害です。

どのように起きるのか

ストレス障害が起きる機序としては、主に不快な刺激を長期間にわたり受け続けること、著しく強いストレス刺激を受けることの2点があげられます。生命の危機を感じるような強力な刺激の場合は、短期間で症状は非可逆的になります。一方、日常生活で生じるような些細な刺激によるストレス反応は障害となるまでにかなり長い時間がかかります。

不快な刺激を受け続けるとどうなるのか

ストレス反応は脳による反応です。不快な刺激を受け続けると脳が反応し続けることになります。同時に、脳に関連する臓器も伴って反応し続けます。次第に、常に身体症状精神症状を引き起こすような変化が生じてしまいます。

このように、不快な刺激を受け続けると、私達の生体恒常性は乱されてしまいます。生体恒常性とは、私たちの体に備わっている「外界の変化に対して体内の環境を一定に保とうとする仕組み」のことです。具体的には、呼吸や内臓の働きに関する自律神経系、ホルモンなどの内分泌系、病気を退治する免疫系などにより生体内を一定に調節していることです。

ストレス障害の症状

では、ストレス障害に陥ると、どのようなことが起こるのでしょうか。

回避的な行動

ストレス障害に陥ると、へ刺激が加わらないように無意識のうちにあらゆる刺激を避けるようになります。

不快感を伴う刺激は、ほとんどが自分の意志とは関係なく勝手に降りかかってきます(受動的な刺激)。これを回避するためには、室内にこもったりなど外界と遮断できる環境に身を置くことになります。しかし、不快な刺激は回避できますが同時にプラスとなる刺激も失うことになります。

その結果、生活に楽しみがなくなります。次第に刺激を受け入れたくなくなり、楽しみや興味を感じなります。遊びや食事に誘われても、断ってしまいます。また、記名力が低下して忘れ物や勘違いが増えたり、コミュニュケーション能力が低下して言葉が出なくなったりもするでしょう。これらの苦悩から逃れるため、他者に怒りの感情を向けたり、規則違反をしたりと反社会的行動に結びつくこともあります。

このような状態となってしまうと、さまざまな刺激を回避し続けることとなり悪循環から抜け出せなくなります。

フラッシュバック現象

辛い体験が頭の中で反復再現される現象です。怒り、悲しみ、不安などの感情やその場の光景が再現されてしまいます。過去に受けた体験に対するトラウマなどが再想起されることもあります。

大きなトラウマとなるような記憶は、そのときに抱いた感情や光景、匂いや音声など得られた感覚が一つのまとまりとして記憶されます。全く別の場所で似たような光景、匂いや音声に遭遇すると記憶として残っていたものが瞬時にフラッシュバックするのです。その場合、当時と同じくらいの恐怖感を伴います。

フラッシュバック現象により、過去の体験が繰り返されることになります。それがさらにストレス反応を引き起こすこととなり、悪循環となります。これは数年間と長期化することが特徴です。

過敏状態

脳が興奮状態になり、繊細な刺激に過敏に反応してしまうことです。

特に、人の五感です。光に眩しさを感じたり、音が大きく聞こえたり、人の話を聞き続けられなくなったり、手足が物に触れたらピリピリしたり、生活臭が気になったりなどがあげられます。
味の好みも変化します。

このような興奮・過敏状態が長期間遷延すると著しい疲労感を感じます。これは脱力感に近い感覚として得られる場合もあります。横になって休んでいても常に不快な感情や嫌な出来事を思い出してしまうため興奮が続いてしまいます。従って休もうとしても回復することができず、むしろ疲労感が強まるという苦しい状況に陥ってしまいます。

自律神経系と副腎ホルモンの変化

興奮状態となると自律神経系は交感神経が優位となり、アドレナリンの作用が強くなります。慢性的なアドレナリンの増加は血管を収縮させて高血圧などの症状を引き起こします。

血液は全身の細胞に酸素と栄養を送っており、老廃物や有害物質の回収・排泄の働きもしています。従って血管の変化や血流障害は身体にさまざまな不調を及ぼします。

また、副腎ホルモンであるコルチゾールを分泌しストレスを緩和しようとしますが、出続けると枯渇してしまい病気になる可能性が指摘されています。

身体症状

ストレス障害に陥ったときは、脳の疲労が極限点に達した状態です。しかし、脳の疲労というものは自分ではわかりにくく最後まで自覚しにくいです。

身体症状が出現して初めて気が付くこともあるでしょう。脳は自律神経系、内分泌系、筋肉系などと密接に連携しています。特に自律神経系や内分泌系は多くの臓器と直結しています。

従って、ストレス障害では多くの身体症状が出現する可能性があります。以下は器官ごとに出やすい身体症状です。

[頻繁に認められる身体症状]

  • 消化器系
    胃もたれ、胃痛、吐き気、嘔吐、下痢、喉の渇きなど
  • 呼吸系
    呼吸苦、胸の圧迫感
  • 循環器系
    頻脈、血圧上昇、冷え、ふらつき、めまい、耳鳴り、耳閉塞、不整脈、動悸など
  • 骨格筋系
    手足のしびれ、頭痛、肩こりなどその他の症状脱毛、微熱、眼瞼けいれんなど

(引用)福間詳,『ストレスのはなしメカニズムと対処法』.中央公論新社,2017,41P

[ストレスにより起こりやすい疾病]

  • 不整脈、帯状疱疹、突発性難聴、偏頭痛、蕁麻疹、高血圧、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、喘息など

(引用)福間詳,『ストレスのはなしメカニズムと対処法』.中央公論新社,2017,41P

ストレス耐性を高めるために、普段からできること

人それぞれストレス反応に対する耐性は異なります。
ストレス障害に陥らないために、ストレス反応への耐性を高くしておくことが大切です。
耐性を高めるために、日常から心がけるとよいことをまとめてみました。

体調管理

規則正しい生活、バランスのよい食生活、適度な運動が不可欠です。健康な体と体力が強力な盾となります。

リズムのある生活を送る

仕事と休みのバランスが崩れたリズムのない生活を送っていると、覚醒と睡眠のバランスが崩れます。1日のリズム、1週間のリズムがきちんと保てていると、疲労防止になります。

生活にメリハリをつける

生活がマンネリ化しないように変化をつける必要があります。マンネリ化とは同じ思考パターンや同じ動作を繰り返すことです。変化がないと新たな発想や気づきはありません。同じことの繰り返しは、安定しますが気持ちの緩みやたるみ、怠け、油断に繋がります。同じことの繰り返しにならないように過ごしてみましょう。

例えば、いつもと違う道で通勤してみる。お昼ご飯を毎日変えてみる。このような小さなことからでもよいのです。

目標を持つ

目標をもって生活をしましょう。目指したいものありたい姿をイメージしながら毎日過ごすと前向きになれます。不快なことがあっても、自分は目標のために日々過ごしていると考えることができます。

テンションの保持とモードの切り替え

日々のテンションには波があるため、適度に切り替える必要があります。人はテンションが下がると弱気になってしまうため、テンションは高いほうがよいです。これは、何もパリピになれということではありません。

ここでいうテンションの高さというのは、何かに対して頑張るぞという気持ちを持つということです。前向きに闘争心が湧いてくるような状態とも言えます。しかし、同じテンションを長期間持続させることは困難です。従って、自分で切り替える必要があります。

例えば、「1日の中で読書をする時間を作る」、「週末は仕事モードを切り替えてプライベートを心から楽しむ」などどいったことです。

生活に余白を作る

「遊び」という言葉があります。誰でも子供のころはたくさん遊んだと思います。大人になっても友人と遊ぶことはあるでしょう。遊びには目的を伴わないことが特徴です。遊びは意味を持たないことに意味があります。生活の中で効率や機能などを考えず、意味のない無駄なことをしてみましょう。

遊ぶことで視野が広がり新たな価値観が形成されたりします。自分の固定観念があったことに気がつくこともあるでしょう。

このように新たな視点を自分から獲得することで、物事を俯瞰的にみることができたり、強い心の状態を作ることができます。

まとめ

ストレス障害とストレス耐性を高める方法について解説してきました。

ストレスは誰でも生じるものであり、環境によっては誰でもストレス障害に陥る可能性があります。ストレス障害に陥ると、非可逆的な後遺症が続いてしまうためとても苦しいです。

ストレス障害に陥らないために、そもそもストレスへの耐性を高く保っておくことが大切になります。基本的な生活を送ることや、目標を持ちながら生活していくことは簡単なようで意外と怠ってしまう場合が多いです。

自らのできることから少しずつ実践をしていきましょう。

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